2021.11.04
10月26日、岡山大学病院歯科・予防歯科部門 澤田ななみ医員、
岡山大学学術研究院医歯薬学域予防歯科学分野 森田学教授らの
研究グループは、自立高齢者において、1秒間に発音できる
「タ」と「カ」の回数が多い(=舌がよく動く)と
栄養状態が 良好であり、栄養状態が良好である人は要介護の前段階である
「フレイル」状態の人が少ないという関連性が確認されたと発表しました。
この研究成果は、2021年10月2日、イギリスの学術雑誌「Gerodontology」に
オンライン掲載されています。
【現状】
これまでの研究では、オーラルフレイルとフレイルが
関係することが報告されています。また、オーラルフレイルと
栄養失調が関係すること、栄養失調とフレイルが関係することが
独立して報告されています。これらのことから、オーラルフレイルと
フレイルとの関係において、栄養状態の影響が介在する可能性が
議論されてきました。しかし、実際にオーラルフレイル、栄養状態、
フレイルの関係を詳しく調査した研究はなく、これらの関係は
明らかにされていませんでした。
【研究成果の内容】
岡山大学病院予防歯科外来を受診する 60 歳以上の患者を対象に、
年齢、性別、全身疾患、歯数、歯周状態、口腔機能、栄養状態および身体機能を調査。
これらのデータを元に分析を行ったところ、下の図のようなモデルが成り立ちました。
この結果から、1 秒当たりに発音できる「タ」「カ」の回数が多い(=舌がよく動く)と
栄養状態が良好であり、栄養状態が良好であるとフレイルの者が少ないことがわかりました。
また、年齢が高いほど舌が動きにくく、栄養状態が悪く、フレイルの者が多いこともわかりました。
【社会的な意義】
研究チームは、舌の運動機能を維持・改善する適切な介入を行うことにより、
フレイルを予防・改善できる可能性があるとしているほか、 身体の健康と口腔の健康は
つながっており、元気な身体で楽しい人生を過ごすためにも、 口腔内のむし歯や歯周病といった
病気に注目するだけではなく、口の機能についても 大切にしてもらいたいとコメントしています。